June 21, 2018
ALFP eマガジン 第1号 Democracy
バックナンバーアジアの「民主化」の波はどこへ?
ALFPが新たに発行したeマガジン『Voices of Asia』の創刊号は「民主主義」をテーマに、6人が寄稿している。
「アジアの声(Voices)」が複数であるように、「民主主義」もアジアでは単数形ではない。戦争、革命、クーデターなど各国がそれぞれの体験の中で「民主主義」を手探りで求めてきたからだ。その状況は、今現在も続いている。
振り返れば、フィリピンや韓国を皮切りに1980年代に始まった「民主化の波」は、冷戦の終焉でアジア各地に及ぶようにみえた。カンボジア和平で「戦場から市場へ」というキャッチフレーズが叫ばれたように、経済の相互依存のネットワークによって生まれた新たな中間層がアジア民主化の担い手となっていく・・・。こうした楽観的な見通しを語れる人は、もういない。逆に「民主化」した国が軍事政権や強権支配に逆戻りする「民主主義の退潮(democratic recession)」(Chito Gascon)が目立っている。グローバル化やネット社会が「市民社会」を作るよりも人々の不安をあおり、大衆感情に迎合する政治が台頭している。
「民主主義」のモデルが崩壊しつつある今、その再生は私たちに共通の課題だ。
その手がかりを「アジアの声」に求めていこう。
水野孝昭(神田外語大学教授 / ALFP諮問委員)
概要
ゲストエディター:Kunda Dixit(「Nepali Times」紙 編集者・発行人 / 2006年度ALFPフェロー)
開かれた自由な社会に脅威をもたらすのは、いまや全体主義的な独裁者だけではない。選挙によって選ばれたポピュリスト政治家も一翼を担っており、その脅威は世界に広がっている。ポピュリズム、外国人への恐怖、あからさまな人種差別を扇動するリーダーたちが、公職に就き、そして、公職に就いた途端に、彼ら自身を当選に導いた制度そのものを壊しにかかるのだ。このような指導者の例はアジア太平洋地域の国々にも存在し、自由を制限し、メディアを弾圧し、法による統治の劣化を容認するような策を次から次に講じてきた。本号では、既成の民主的政党内における混乱、グローバリゼーションへの反動、そしてこういった傾向に拍車をかけるソーシャル・ウェブの広がりについて分析する。また、アジア各国の執筆者や研究者たちが、リベラルな民主的空間を保持するためのモデルや抵抗の成功例についても紹介する。
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ポピュリスト政治家の時代における自由なメディアと民主主義
クンダ・ディクシット / Kunda Dixit (ネパール)
「Nepali Times」紙 編集者・発行人 / 2006年度ALFPフェロー
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民主主義の《民》を問う
グナワン・モハマド / Goenawan Mohamad(インドネシア)
エッセイスト / 劇作家 /「Tempo」誌 創始者 / 1997年度ALFPフェロー
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自由とデモクラシーのための抵抗
ホセ・ルイス・マーティン・ガスコン / Jose Luis Martin C. Gascon(フィリピン)
フィリピン人権委員会議長 / 2008年度ALFPフェロー
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インターネット時代の中国のポピュリズム
阿古智子 / Ako Tomoko(日本)
東京大学大学院総合文化研究科 准教授 / ALFP諮問委員
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デモクラシーの民主化
マヘンドラ・ラマ / Mahendra P. Lama(インド)
ジャワハルラル・ネルー大学教授 / 2001年度ALFPフェロー
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韓国のろうそく革命と参与デモクラシー
李泰鎬(イ・テホ)/ Lee Taeho(韓国)
参与連帯(PSPD)政策委員会 委員長 / 2016年度ALFPフェロー